TURTLE MOON の Web雑記
シュールな景色!廃線跡に転がるマネキンの物語:06年9月18日
秋風に吹かれて、夏の勢いを失いつつもなお生い茂る草むらを、革靴の底で踏みしめた。
誰もいない。この街には、もう、誰もいない。
目の前に続く、やがて枯れゆく秋の草に埋もれそうな、赭く錆び付いた線路。
私はその線路の上を、両腕を左右に広げて、平衡を取りながらゆっくりと歩いた。
そのまましばらく、線路の上を歩き続けると、真っ白な肌をした、女の裸が目に入った。
草むらに転がる、裸のマネキンの姿は、あまりに唐突な印象だ。
瞬間、私は平衡を失って、古く錆び付いた線路から、ゆらりと片足が外れた。
両脚を地面に付けると、安定という、この上ない心地よさを、全身に感じた。
私は、軽く猫背な背中を作りながら、辺りを見渡した。
いや、誰もいない。誰もいるはずがないんだ、きっと……。
私は、その白い女を、車に轢かれたネコの死体を避けるような足取りで、ぐるりと迂回した。
それでも私の視線は、その白い肌の女から、片時も離れることがなかった。
彼女はきっと、石炭を運ぶ機関車に、撥ねられたのだろう。
「手足も首も、もとより持たない」
「胴体だけが、撥ねられた」
その場面が、頭に浮かんだ。
そう、たった今、目の前で起こった出来事のように。
鮮やかな色彩を持った、映像で……。
「君のことは、ちゃんと覚えているよ……」
私は彼女にそう告げると、ひび割れた姿のマネキンは、まるで手品でも見るような一瞬で、音も立てずに消え去った。
残された私は、ただ独りで、草むらを歩いた。
肌寒さを増した秋風を体に受け、外れていた上着の釦を、いくつか留めた。
草むらも、線路も、全てが色を失う中、私は歩いた。
逸る心を抑えながらも、つい軽くなる足取りに戸惑うことなく、私は、景色のない向こう側へ進むことを、望んだのである……。
夢の中で見た景色と、産まれる前の遠い記憶が、今に甦る瞬間が、皆様にはありませんか?
今でも私の耳には、秋空の鉄路を奔る機関車の汽笛が、そして、勢いよく弾かれ地面を打ち、重たい何かがひび割れる音が、何度も何度も聞こえています……。←ちょwなんだったの今日の記事ww